ネイティブスピーカーが日常会話で「信じられないほど値段が高い!」と言いたいときによく使う定番イディオム「Cost an arm and a leg」。
直訳すると「腕1本と脚1本分の費用がかかる」ですが、金銭・価格についての強い誇張表現(Hyperbole)として機能し、日本語の「めちゃくちゃ高い」「ものすごくお金がかかる」「目玉が飛び出るほど高い」に相当します。
本記事では、このフレーズの正確なニュアンスや語源をめぐる諸説、動詞を変えた応用構文(pay / charge)、実践的な会話例文から類語との使い分けまで分かりやすく解説します。
1. 基本情報
| 代表フレーズ | It costs an arm and a leg. That car is going to cost you an arm and a leg. |
|---|---|
| 表現のタイプ | イディオム / 誇張表現(Hyperbole / 慣用句) |
| 日本語訳 | めちゃくちゃ高い、ものすごくお金がかかる、法外な値段がする、目玉が飛び出るほど高い |
| コアイメージ | 自分の手足を差し出さなければならないほど、莫大で高額な代償・金額(an exorbitant price)を要求される状態 |
2. 「Cost an arm and a leg」の語構成と基本イメージ
単語の成り立ち
- cost = (費用・金額が)かかる
- an arm = 腕1本
- a leg = 脚1本
人間にとって極めて大切でかけがえのない身体の一部(arm, leg)を引き合いに出すことで、「普通では考えられないほど法外な金額であること」を強調する比喩表現です。
「expensive」とのニュアンスの違い
客観的事実として高額であることを述べる very expensive や costly に対し、cost an arm and a leg は手足を失う強烈なイメージを利用したくだけた表現で、以下のような感情が込められます。
- 「予想をはるかに超えて高すぎる!」という驚きや不満
- 金額の過大さを強調する感情的な誇張
3. 由来と語源をめぐる諸説
「腕と脚」という組み合わせの起源については諸説語られますが、確固たる単一の起源は証明されておらず、複数の要因が重なって定着したと考えられています。
① 文献上の初出と発展(歴史的記録)
主要な英語辞書(Merriam-Websterなど)の記録によると、「法外な価格」という意味での用例は1924年にはすでに確認されています。さらに遡ると、19世紀のアメリカでは give a leg や cost a leg といった「身体の一部(特に脚)を代償にする」古い表現が存在しており、これらが発展・強調されて an arm and a leg に変化したという見解が有力です。その後、20世紀半ばにかけてアメリカ英語を中心に広く定着していきました。
② 戦争での代償との関連説
大戦期において多くの兵士が戦闘で手足を失った現実から、「手足を犠牲にするほどの大きな代償」という連想が重なり、このフレーズの広まりを後押ししたのではないかとする説もあります。ただし、時系列や用例の記録から見て、戦争だけがこの言葉の直接の起源として証明されているわけではありません。
③ 肖像画の価格設定説(民間語源)
「18〜19世紀の画家が肖像画を描く際、顔だけでなく手や脚まで描き込むと料金が高くなった」というエピソードがしばしば語られます。しかし、この説には裏付けとなる歴史的証拠がなく、後から作られた民間語源(folk etymology)の一つと考えられています。
4. 英語での使い方と派生パターン
cost an arm and a leg だけでなく、動詞を pay や charge に置き換えることで様々な主語や視点から使えます。
| 構文パターン | ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| cost (someone) an arm and a leg | (物が主語で)〜に莫大な費用がかかる | The flight tickets cost me an arm and a leg. |
| pay an arm and a leg (for ~) | (人が主語で)〜に法外な大金を支払う | I paid an arm and a leg for these concert tickets. |
| charge an arm and a leg | (店や業者が)法外な金額を請求する | That repair shop charges an arm and a leg. |
5. 実践例文集
① 買い物・家電・車について
"I’d love to buy that new smartphone, but it costs an arm and a leg."
(あの最新スマホを買いたいけれど、目玉が飛び出るほど高すぎるよ。)
"Fixing the air conditioner cost an arm and a leg, but we had no choice in this heat."
(エアコンの修理にものすごくお金がかかったけれど、この暑さでは仕方なかった。)
② 旅行・外食・チケットについて
"Hotels in downtown Tokyo can cost an arm and a leg during peak travel season."
(旅行のハイシーズンには、東京中心部のホテルはとんでもなく高い値段になることがある。)
"We paid an arm and a leg for dinner at that rooftop restaurant, but the view was breathtaking."
(あのルーフトップレストランでのディナーには法外な金額を払ったけれど、景色は息をのむほど素晴らしかった。)
6. 表現のニュアンスと注意点
① 口語(インフォーマル)表現である点に注意
友人同士の会話や日常的な雑談で広く用いられます。一方、学術論文、公的文書、公式な財務レポートなどのフォーマルな文脈では避け、exorbitant や excessively expensive、prohibitive などのフォーマルな語彙を用いるのが適切です。
② 時制と単複のルール
-
時制の変化: 動詞
costは不規則変化動詞で、過去形も cost(または過去分詞 cost)です。
例: It cost(過去形)me an arm and a leg.(大金がかかった) - 冠詞・単数形に注意: 通常は an arm and a leg(腕1本と脚1本)の形で固定されており、複数形にはしません。
7. 類似フレーズとの使い分け比較
価格の高さや出費の大きさを表す英語表現には、それぞれ異なるニュアンスがあります。
| イディオム / 表現 | ニュアンス | 特徴・使い分け |
|---|---|---|
| Cost an arm and a leg (動詞句) |
めちゃくちゃ高い・法外な値段 | 手足を引き合いに出す誇張表現。金額の法外さへの驚きや不満を感情豊かに表す。 |
| Cost a fortune (動詞句) |
大金(一財産)がかかる | 日常会話で頻出する一般的な表現。身体のイメージを含まないため比較的使いやすい。 |
| Break the bank (動詞句) |
財布をすっからかんにする・破産させる | 特に否定形(won't break the bank =「それほど高くない/無理のない金額だ」)でよく使われる。 |
| Pay through the nose (動詞句) |
不当に高額なお金を払わされる | 単に高価というだけでなく、「ぼったくられた」「しぶしぶ払わされた」という被害感情が強い。 |
| A rip-off (名詞句) |
ぼったくり、法外な値段の品 | 価値や品質に見合わない高値を批判する口語の名詞表現。 |
8. 否定形での応用表現(「高価ではない」を伝える)
「それほど大金はかからない」「手頃な価格で手に入る」と伝えたいときには、否定形でもよく使われます。
"You don't have to pay an arm and a leg to get a reliable laptop."
(信頼できるノートパソコンを買うのに、目玉が飛び出るような大金を払う必要はありません。)
"Quality skincare doesn't have to cost an arm and a leg."
(質の良いスキンケアに、法外なお金をかける必要はありません。)
9. 英語学習に役立つ関連単語(価格・費用)
ニュース英語やビジネス・試験対策などで役立つ「価格」に関する重要語彙です。
| 単語 | 品詞・意味 | 補足・使い方 |
|---|---|---|
| exorbitant | 形 / 法外な、極端に高い | exorbitant prices(法外な値段)のようにフォーマルな文脈で多用される。 |
| steep | 形 / (価格・料金が)高い、割高な | The price is a bit steep.(値段が少し高い・割高だ)のように口語でも頻出。 |
| prohibitive | 形 / (価格が高すぎて)手が出ない | prohibitive costs(高すぎて手が出ない費用)として用いられる。 |
| overpriced | 形 / 割高な、高すぎる | 品質や本来の価値に対して値段が高すぎる状態を指す。 |
| affordable | 形 / 手頃な、良心的な価格の | 高価(expensive)の対義語としてポジティブに使われる。 |
10. まとめ
- Cost an arm and a leg = 「めちゃくちゃ高い」「ものすごくお金がかかる」を表すポピュラーな誇張イディオム。
- 手足を失うほどの大きな代償というイメージから、価格の法外さに対する驚き・不満をくだけた口語で表現できる。
pay an arm and a leg(大金を払う)やcharge an arm and a leg(法外な金額を請求する)など動詞を変えて応用可能。- 否定形(
doesn't cost an arm and a leg)で使えば、「無理のない手頃な価格で手に入る」ことを強調できる。 - フォーマルな文書やビジネスレポートでは、
exorbitantやprohibitive、excessively expensiveなどの表現を用いる。
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