英語を読んだり書いたりするとき、want to go、enjoy reading、decide to study、seem to know
のように、動詞の後ろに別の動詞(準動詞)がつながる形を無数に見かけます。
言語学や現代英文法では、このように後続の準動詞(to不定詞・動名詞 -ing・原形不定詞・分詞など)を従えて「動詞の鎖」を作ることができる動詞を catenative verb(連鎖動詞 / カテナティブ動詞) と呼びます。
この記事では、次のポイントをわかりやすく整理します。
- catenative verb(連鎖動詞)の基本的な意味と語源
- 学校文法(不定詞・動名詞の語法)との関係性
- 4大分類(to不定詞をとる動詞 / 動名詞をとる動詞 / 目的語を挟む動詞など)
remember to doとremember doingなど意味が変わる重要動詞- 動詞が3つ以上連なる「多重連鎖(catenative chain)」の構造
- 受動態や否定詞
notを組み合わせた発展構文
1. まず押さえる!Catenative Verb(連鎖動詞)の全体像
catenative は、ラテン語で「鎖(chain)」を意味する catena(カテナ)に由来する言葉です。つまり、catenative verb とは「動詞同士を鎖のようにつなぐ働きを持つ動詞」を指します。
学校文法では「to不定詞を目的語にとる動詞」「動名詞を目的語にとる動詞」として個別に暗記することが多いですが、言語学(CGEL等)ではこれらを catenative construction(連鎖構文) という統一的な枠組みで説明します。
連鎖動詞の全体像
連鎖動詞が従える補部(準動詞)の形式によって、次のように分類できます。
├── to 不定詞補部(V + to do): want, hope, decide, seem, pretend など
├── 動名詞(-ing)補部(V + doing): enjoy, avoid, finish, mind, keep など
├── 両方とる補部
│ ├── 意味がほぼ同じ: start, begin, continue, prefer など
│ └── 意味が異なる: remember, forget, regret, try, stop, mean など
├── 目的語(NP)を挟む構文(V + O + to do / doing / do): tell, persuade, help, make, let, have など
└── 原形不定詞補部(V + do): help(口語での come, go など)
動詞の後ろにさらに連鎖動詞がつながることで、She seems to want to avoid meeting him.(彼女は彼に会うのを避けたがっているように見える)のように、鎖が何重にも連なる
catenative chain(多重連鎖) を作ることができます。
代表例で比較
| 連鎖動詞 | 後続の形(補部) | 例文 | 日本語訳 |
|---|---|---|---|
| want | to 不定詞 | I want to learn Spanish. | スペイン語を学びたい。 |
| enjoy | 動名詞(-ing) | She enjoys playing tennis. | 彼女はテニスをするのを楽しむ。 |
| seem | to 不定詞 | He seems to know the truth. | 彼は真相を知っているようだ。 |
| help | 原形 / to 不定詞 | Can you help (me) carry this? | (私が)これを運ぶのを手伝ってくれますか? |
| remember | to do / doing | I remember locking the door. | ドアに鍵をかけたことを覚えている。 |
2. 連鎖動詞の代表的な4つのパターン
連鎖動詞は、後ろに従える準動詞の形態によって大きく4つの基本パターンに分類されます。
① 動詞 + to 不定詞(V + to do)
意志・意図・希望・判断・様子などを表す動詞が多く属します。
| 動詞 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| want / wish / hope | 〜したい / 望む | We hope to visit Paris. |
| decide / choose | 〜することに決める | They decided to accept the offer. |
| refuse / agree | 拒否する / 同意する | He refused to comment on the matter. |
| plan / promise | 計画する / 約束する | She promised to call me back. |
| seem / appear | 〜のように思われる | The problem seems to be solved. |
| pretend / tend | ふりをする / 〜しがちである | Prices tend to rise over time. |
特徴
「これから行う意志や計画」「判断・推量」に関わる動詞には to 不定詞をとるものが多く存在します。ただし一律のルールで決まるわけではないため、動詞ごとの基本形として押さえることが大切です。
② 動詞 + 動名詞(V + doing)
完了・回避・感情の対象・継続などを表す動詞が属します(日本の英語学習で「メガフェプス(MEGAFEPS)」などと整理されるグループです)。
| 動詞 | 意味 | 例文 |
|---|---|---|
| enjoy | 〜を楽しむ | I enjoy watching movies at home. |
| avoid / escape | 〜することを避ける | You should avoid making hasty decisions. |
| finish / complete | 〜し終える | Have you finished writing the report? |
| mind | 〜を気にする・嫌がる | Would you mind closing the window? |
| admit / deny | 認める / 否定する | The suspect denied taking the money. |
| keep / practice | 〜し続ける / 練習する | She kept talking for hours. |
| postpone / give up | 延期する / 諦める | They postponed holding the event. |
特徴
これらの動詞は補部として to 不定詞をとらず、動名詞(-ing)をとる語法が決まっています。
③ 動詞 + 目的語 + 準動詞(V + O + to do / do / doing)
動詞と後続動詞の間に「行為の主体となる目的語(名詞句)」を挟む連鎖構造です。
| パターン | 代表的な動詞 | 例文 |
|---|---|---|
| V + O + to do | want, ask, tell, allow, encourage, advise, force, persuade | The doctor advised him to stop smoking. (医師は彼に禁煙するよう助言した。) |
| V + O + 原形不定詞 | make, let, have, help | She let me use her laptop. (彼女は私にノートPCを使わせてくれた。) |
| V + O + 原形 / doing | see, hear, feel, watch | I saw him crossing the street. (彼が通りを渡っているところを見かけた。) |
| V + O + doing | keep, find など | She kept me waiting. (彼女は私を待たせた。) |
④ 動詞 + 原形不定詞(V + do)
to を伴わずに直接原形不定詞(bare infinitive)を従える連鎖動詞です。代表的な動詞に help があります。
- Can you help clean the kitchen?(キッチンを掃除するのを手伝ってくれる?)
※helpの後ろではtoを省略して原形を使うことができます(会話でも多用されます)。 - Come see this! / Go get your
coat.(来てこれを見て! / 行って上着を取っておいで。)
※comeやgoの後に直接原形動詞をつなげる口語的な連鎖構造です。
3. 【超重要】to 不定詞と -ing で意味が変わる連鎖動詞
連鎖動詞の中には、後ろに to do を置くか doing
を置くかによって、文全体の意味が劇的に変わるものがあります。文脈に応じた使い分けを正確にマスターしましょう。
| 動詞 | + to 不定詞(これから〜する) | + 動名詞 -ing(すでに〜したこと・動作そのもの) |
|---|---|---|
| remember | 忘れずに〜する Remember to turn off the lights. (忘れずに明かりを消してね。) |
〜したことを覚えている I remember meeting her before. (以前彼女に会ったのを覚えている。) |
| forget | 〜するのを忘れる Don't forget to lock the door. (ドアを施錠するのを忘れないで。) |
〜したことを忘れる I'll never forget seeing that view. (あの景色を見たことを決して忘れない。) |
| regret | 残念ながら〜する We regret to inform you of the delay. (残念ながら遅延をお知らせいたします。) |
〜したことを後悔する He regrets saying such harsh words. (彼はそんな厳しい言葉を言ったことを後悔している。) |
| try | 〜しようと努力・挑戦する I tried to open the heavy door. (その重いドアを開けようと試みた[しかし開かなかった]。) |
試しに〜してみる Try taking this medicine. (試しにこの薬を飲んでごらん。) |
| stop | 〜するために立ち止まる He stopped to tie his shoes. (彼は靴紐を結ぶために立ち止まった。) ※文法的には副詞的用法の目的 |
〜するのをやめる・中断する He stopped smoking last month. (彼は先月タバコをやめた。) |
| mean | 〜するつもりである I didn't mean to hurt your feelings. (あなたの感情を傷つけるつもりはなかった。) |
〜することを意味する・伴う Missing the train means waiting an hour. (列車を逃すことは1時間待つことを意味する。) |
to不定詞と動名詞(-ing)の使い分けは、単純な「未来/過去」という単一のルールだけで一律に決まるわけではありません。
remember to do(忘れずに〜する)と
remember doing(〜したことを覚えている)のように、動詞ごとに生まれる具体的な意味の違いをセットで覚えることが確実です。
意味がほとんど変わらない動詞
一方、以下の連鎖動詞は to do と doing のどちらをとっても基本的な意味はほとんど変わりません。
- start / begin: It started to rain. = It started raining.(雨が降り始めた。)
- continue: She continued to work. = She continued working.(彼女は働き続けた。)
- like / love / hate / prefer: I like to swim. = I like
swimming.(泳ぐのが好きだ。)
※微細なニュアンスとして、like to doは「習慣・好ましい選択」、like doingは「その行為自体を楽しむこと」を強調する傾向があります。
4. 動詞が3つ以上連なる「多重連鎖(Catenative Chain)」の構造
連鎖動詞の真骨頂は、動詞が鎖のように3つ、4つと次々に連結していく 多重連鎖(catenative chain) にあります。
多重連鎖の具体例と構造分解
次の英文を見てみましょう。
(彼女はそれを試しにやってみたがっているように思える。)
この文では、4つの動詞が以下のように順次リンクしています。
└── [V2] to want (〜したい:to不定詞を要求)
└── [V3] to try (試しに〜する:動名詞を要求)
└── [V4] doing (それを実行する)
さらなる連鎖のバリエーション
- I hope to avoid having to tell him the truth.
(彼に真実を話さなければならない事態を避けたいと願っている。)
【hope (to) → avoid (-ing) → have (to) → tell】 - He pretended to be trying to help us.
(彼は私たちを助けようと努力しているふりをした。)
【pretend (to) → be (-ing) → try (to) → help】
英語のネイティブスピーカーは、頭の中で複雑な複文(that節など)を組み立てる代わりに、連鎖動詞を次々と数珠つなぎにすることで、話者の判断・願望・行動をスピーディーに表現しています。
5. 助動詞・受動態・否定構文との組み合わせ
連鎖動詞は、助動詞、受動態、完了形、否定詞 not と柔軟に組み合わせることができます。正確な語順と意味の違いを押さえましょう。
① 否定詞 not の位置で意味が変わる
否定詞 not を「どの動詞の直前」に置くかによって、否定される対象が変わります。
| 例文 | 意味の違い |
|---|---|
| I decided not to go. | 「行かないこと」を決めた(行かないという意志決定) |
| I didn't decide to go. | 行くとは決めていなかった(決定自体をしていない) |
| He pretended not to hear. | 「聞こえないふり」をした |
| He didn't pretend to hear. | 聞こえたふりはしなかった |
② 受動態(be done)や完了形(have done)の連鎖
連鎖動詞の後ろに受動態 to be done / being done や完了形 to have done / having done
を接続して、時間差や受け身を表現できます。
- Nobody likes being criticized in public.
(人前で批判されるのが好きな人はいない。)【like + 受動態動名詞】 - She deserves to be promoted.
(彼女は昇進して当然だ。)【deserve + 受動態to不定詞】 - He claims to have seen a UFO.
(彼はUFOを見たと主張している。)【現在主張しているが、見たのはそれ以前の過去】 - I regret having said that.
(あんなことを言ってしまったことを後悔している。)【過去の言動に対する現在の後悔】
③ 準助動詞(Semi-auxiliaries)との境界線
have to、be able to、be going to、used to
などの「準助動詞」も、文法構造としては「動詞 + to不定詞」の連鎖動詞構文から助動詞化したものと考えられています。
She [may] [have to] [start] [working] overtime.
このように助動詞(may)+準助動詞(have to)+連鎖動詞(start)+動名詞(working)という長い動詞の連鎖も英語ではごく自然に成立します。
6. 知っておくと役立つ連鎖動詞の豆知識
① 言語学での助動詞と連鎖動詞
著名な現代英文法書『The Cambridge Grammar of the English Language (CGEL)』などでは、助動詞(can, must, will等)も「動詞補部をとる特殊な連鎖動詞」として包括的に分類されることがあります。
学習上は、語彙的意味を持つ一般動詞(want, enjoy, seem等)を「連鎖動詞(lexical catenatives)」として整理するのが最も実用的です。
② 二重 -ing の回避(Double -ing Constraint)
start や continue は -ing
もとれますが、動詞自体が進行形(-ing)になっている場合は、語感の悪さを避けるため後ろに to 不定詞を置くのが普通です。
⭕ It is starting to rain.
❌ It is starting raining.(-ing が重なるため通常避ける)
③ 口語での原形連鎖(come / go など)
help (to) do で to が省略されるのと同様に、日常会話では come visit や
go check のように接続詞 and や to
なしで直接動詞を続ける口語的な連鎖表現もよく使われます。
④ 使役動詞・知覚動詞の受動態での変化
能動態では原形不定詞をとる使役動詞 make や知覚動詞 see / hear は、受動態になると to
不定詞が復活 します。
・能動:They made him confess.
・受動:He was made to confess.
7. FAQ(よくある質問)
Q1. なぜ「連鎖(catenative)」動詞と呼ばれるのですか?
A. ラテン語で鎖を意味する catena に由来し、動詞が鎖のようにつながる構造を作るためです。
want to try to learn のように動詞の後ろに別の準動詞を次々と連鎖させることができます。
Q2. 日本の学校文法での「不定詞・動名詞の語法」と同じですか?
A. はい、対象としている動詞群や文法規則は基本的に同じです。
学校文法では「to不定詞をとる動詞」「動名詞をとる動詞」として個別に学びますが、言語学ではこれらを「連鎖動詞(catenative verbs)」として統一的に説明します。
Q3. enjoy はなぜ to 不定詞をとれないのですか?
A. enjoy の後ろに動詞を置く場合、英語の語法(verb pattern)として必ず動名詞(-ing)をとるためです。
enjoy doing で「〜することを楽しむ」という意味を表し、enjoy to do
という形では使いません(例:I enjoy playing tennis.)。
Q4. stop to smoke と stop smoking の違いは何ですか?
A. stop to smoke は「タバコを吸うために立ち止まる」、stop smoking は「喫煙をやめる(禁煙する)」です。
to smoke は目的を表す副詞的用法であり、smoking は動作の中断を表す目的語(連鎖補部)です。
Q5. 目的語を挟む want you to come も連鎖動詞ですか?
A. はい、連鎖構文(catenative construction)の一種です。
専門的には「目的語付き連鎖構文(complex catenative construction)」と呼ばれ、後続動詞の意味上の主語として名詞句が介在します。
Q6. 動詞は最大で何個までつなげられますか?
A. 文法上の厳密な上限はありません。
意味が通じる限り You might have seemed to be wanting to avoid seeing us.
のように5つ以上の動詞がつながることも文法的に可能です。
8. まとめ
Catenative verb(連鎖動詞)を理解するための重要ポイントを整理します。
- Catenative verb は、準動詞(to不定詞・動名詞・原形等)を従えて動詞の鎖を作る動詞
- 語源はラテン語で「鎖」を意味する catena
- V + to 不定詞: want, decide, hope, seem 等
- V + 動名詞(-ing): enjoy, avoid, finish, mind 等
- 意味が変わる重要動詞: remember, forget, regret, try, stop, mean
- 意味がほぼ変わらない動詞: start, begin, continue, like, prefer
- 目的語を挟む構文: want/tell/advise someone to do, let/make someone do, see someone do/doing
- 動詞が次々と連結する 多重連鎖(catenative chain) が可能(例:seems to want to try doing)
- 否定詞
notは直後の準動詞を否定する(decided not to go = 行かないことに決めた) - 英語の感情や判断、行動の連鎖をスムーズにつなぐ最重要構文の1つ
連鎖動詞の仕組みをマスターすると、学校英語で暗記した「不定詞・動名詞の語法」が1本の太い幹としてつながり、ネイティブの思考プロセスに沿ってスムーズに英語を読解・アウトプットできるようになります。
文法用語やルールの暗記にとどまらず、「ネイティブが実際にどう使い分けているか」をアルファベット順(A-Z)で直感的に引ける定番の英文法リファレンスです。
Practical English Usage 4th Edition
世界中の英語学習者・英語教師が手元に置くバイブル。「この動詞の後ろは to不定詞か -ing か?」「ニュアンスの違いは?」といった疑問を即座に解決できる決定版。