英語で人やモノ、出来事などを指し示すときに使われるのが demonstrative pronoun(指示代名詞) です。
this(これ)、that(あれ)、these(これら)、those(あれら)の4つが代表例ですが、「名詞の前に付くときとの違いがわからない」「it
や one
とどう使い分けるのか」「距離感や心理的なニュアンスの違いを知りたい」と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、次のポイントをわかりやすく整理します。
- demonstrative pronoun の基本的な意味と分類
- 指示代名詞(pronoun)と指示形容詞/指示限定詞(determiner)の違い
- 距離感(空間・時間・心理的距離)による使い分けの傾向
it・one・this/thatの代名詞比較- 前文の内容や発言を受ける
that/thisの使い方 - 試験・フォーマルな文章でよく使われる
that of/those of構文 - 日常会話・電話・慣用表現での実践的な使い方
1. 指示代名詞(Demonstrative Pronoun)の基本と分類
demonstrative pronoun は、特定のモノ・人・事柄を「指し示して(demonstrate)」その代わりに使う代名詞です。日本語では「指示代名詞」「これ・それ・あれ」などと訳されます。
Cambridge Dictionary でも、demonstrative pronoun を「特定の人物や物を指し示す代名詞(this, that, these,
those)」と定義しています。
[Cambridge Dictionary:
Demonstratives (this, that, these, those)]
指示代名詞の4つの基本形
指示代名詞は「話し手からの距離感(近い/遠い)」と「数(単数/複数)」の2つの軸で分類されます。
| 距離感 | 単数(Singular) | 複数(Plural) | 日本語の意味 |
|---|---|---|---|
| 近称(Near) 手元・現在・近い |
this | these | これ / これら |
| 遠称(Far) 離れた場所・過去・遠い |
that | those | あれ(それ) / あれら(それら) |
├── Demonstrative Pronoun(指示代名詞:単独で名詞として機能する)
│ ├── Near: this (単数), these (複数)
│ └── Far: that (単数), those (複数)
└── Demonstrative Determiner / Adjective(指示限定詞/指示形容詞:名詞の前に置かれる)
├── Near: this book, these books
└── Far: that car, those cars
2. 指示代名詞(Pronoun)と指示形容詞/指示限定詞(Determiner)の違い
this, that, these, those
は、指示代名詞としても、名詞の修飾語としても使われます。日本の学習文法では名詞の前に置く場合を「指示形容詞」と呼ぶことが多いですが、現代英文法(言語学)では
指示限定詞(demonstrative determiner) として整理されるのが一般的です。
文法上の主な見分け方は「単独で使われているか、名詞の直前に付いているか」です。
| 分類 | 文法上の働き | 例文 |
|---|---|---|
| 指示代名詞 (Demonstrative Pronoun) |
単独で主語や目的語になる (直後に名詞が来ない) |
This is delicious. (これは美味しいです。) |
| 指示限定詞/指示形容詞 (Determiner / Adjective) |
直後の名詞を限定・修飾する ( this/that + 名詞) |
This apple is delicious. (このリンゴは美味しいです。) |
例文で比べる
・That is my umbrella.(あれは私の傘です。)
・I bought these yesterday.(昨日これらを買いました。)
【指示限定詞/指示形容詞(名詞の前で使用)】
・That umbrella is mine.(あの傘は私のものです。)
・I bought these shoes yesterday.(昨日この靴を買いました。)
※見分け方の目安:this / that / these / those
のすぐ後ろに名詞が続いていれば「限定詞(形容詞的働き)」、続いていなければ「指示代名詞」です。
3. this / that / these / those の距離感(空間・時間・心理)
指示代名詞の核心は「話し手(スピーカー)からの距離感」です。この距離感は「空間的距離」だけでなく、「時間的距離」や文脈上の「心理的距離」にも応用されます。
① 空間的距離(Physical Distance)
物理的に手の届く範囲や話し手に近い場所・モノには
this / these、離れた場所や相手側にあるモノには that / those を使うのが基本です。
- What is this?(手に持っているものなどを指して「これ何?」)
- Look at that over there.(あそこに見えるものを指して「あれを見て」)
② 時間的距離(Time Distance)
現在進行中の出来事や近い時間軸には
this / these、過去・未来・一段落した出来事には that / those が好まれます。
- This is a great party!(今参加しているパーティーについて「最高だね!」)
- That was a wonderful speech.(聞き終わったスピーチについて「素晴らしいスピーチでした」)
③ 心理的・感情的距離(Psychological Distance)
話者が親近感や関心を持っている話題には
this、客観視したいときや心理的に少し距離を置きたいときには that が使われることがあります。
- I love this song!(この曲大好き!=気持ちの近さ)
- I don’t like that attitude of his.(彼のあの態度が気に入らない=客観的・忌避の距離感)
4. 前文の内容を受ける that と this の使い方
指示代名詞 that や this は、単一の物だけでなく「相手の発言」や「直前に述べた文全体の内容」を受けることができます。
1. 既出の発言・事実を受ける that
会話で相手が言ったことや、直前に述べられた状況・事実を受けるときは that がよく使われます。
B: That's great news!(それは素晴らしい知らせだね!)
※
That
は「相手が試験に合格したこと」全体を指しています。
2. これから述べる内容や当事者意識を示す this
自分がこれから話す内容を予告したり、直前に自分が述べたことを手元に提示して強調したい場合は this が使われます。
・He said this: "Never give up."(彼はこう言いました。「絶対に諦めるな」と。)
5. 【頻出】that of / those of 構文(比較対象の重複を避ける用法)
TOEICなどの英語試験や学術論文、フォーマルな英文でよく登場するのが that of ~ /
those of ~ の構文です。
英語では比較の文で同じ名詞を繰り返すことを避ける傾向があります。そのため、既出の単数名詞の代わりに that、複数名詞の代わりに those
を置きます。
単数名詞を受ける "that of"
❌ The climate of Tokyo is milder than the climate of London.
⭕ The climate of Tokyo is milder than that of London.
(東京の気候はロンドンの気候より温暖です。)
※不可算名詞 climate の繰り返しを避けるため that of を使用します。
複数名詞を受ける "those of"
❌ The ears of rabbits are longer than the ears of cats.
⭕ The ears of rabbits are longer than those of cats.
(ウサギの耳はネコの耳よりも長いです。)
※複数名詞 ears の繰り返しを避けるため those of を使用します。
6. 代名詞の比較:it vs one vs this / that
「前に出た名詞の代わりに使う」代名詞には、指示代名詞以外にも it や one があります。それぞれの特徴を整理しましょう。
| 代名詞 | 指す対象 | ニュアンス・特徴 |
|---|---|---|
| this / that | 特定のもの・人・文全体 | 「これ/あれ」と明示的に指し示す(スポットライトを当てる)感覚。距離感が伴う。 |
| it | 話題に出た「まさにそのもの」 | すでに文脈上明白な特定物を指す。改めて指し示す意識や距離感はない。 |
| one | 同種の可算名詞の代用 | 同種の名詞の繰り返しを避けるために使う。形容詞を伴って the red one のように特定化されることもある。複数形は
ones。
|
比較例文
(ペンを失くした。新しいのを1本買わないと。) → 同種のペン(どのペンかは未定)
・Which jacket do you like? — I like the blue one.
(どのジャケットが好き? — 青いやつが好き。) → 特定の形容詞が付いた代用
・I lost my pen. Have you seen it?
(ペンを失くした。それ見なかった?) → 私が失くした「まさにそのペン」
・I found my old pen. This was a gift from my father.
(昔のペンを見つけた。これは父からの贈り物だった。) → 手元にある対象に意識を集中させて語る感覚
7. 知っておくと役立つ指示代名詞の慣用表現・イディオム
① those who ~(〜する人々)
those は関係代名詞 who
を伴って「〜する人々(people who ~)」という意味を表します。
Heaven helps those who help themselves.
(天は自らを助ける者を助ける。)
② 電話での会話表現
電話口で「私は〜です」と名乗るときは This is ~、相手を確認するときは
Is that ~? を使う定型表現があります。
Hello, this is Ken. Is that
Mary?
(もしもし、ケンです。メアリーさんですか?)
③ That’s why ~ / That’s because ~
因果関係を表す重要表現です。
- That’s why ~:「そういうわけで〜だ(結果)」
- That’s because ~:「それは〜だからだ(理由)」
④ 日常会話の決まり文句
- That’s it.(それでおしまい/まさにそれだ)
- That’s right.(その通り)
- Like this / Like that(こんな風に/あんな風に)
8. FAQ(よくある質問)
Q1. 指示代名詞と指示限定詞(指示形容詞)はどう見分ければいいですか?
A. 直後に名詞があるかどうかで判断します。
This is ~ のように単独で使われていれば指示代名詞、This book is ~
のように直後に名詞があれば指示限定詞(指示形容詞)です。
Q2. 電話で "I am Tom." ではなく "This is Tom." と言うのはなぜですか?
A. 電話回線を通じた自らのやり取りを「こちら」として提示する英語特有の決まり文句だからです。
相手を確認する場合も "Who are you?" ではなく "Who is that?"(そちらはどなたですか?)と表現するのが標準的です。
Q3. "those who ~" の those は指示代名詞ですか?
A. はい、指示代名詞 those が人々を表す用法です。
people who ~ とほぼ同義で、「〜する人々」「〜する者たち」という意味の一般的な表現として使われます。
Q4. 前の文全体を受けるとき、this と that のどちらを使うべきですか?
A. 既に述べられた事実は that で受けるのが一般的ですが、this も使われます。
相手の発言や既に終わった話を受ける場合は that が自然です。自分の発言やこれから述べる内容を強く提示したい場合は
this を使います。
Q5. "that of" を使わずに "milder than London" と書いても通じますか?
A. 日常会話では意味が通じることもありますが、文脈上不自然になりやすいため避けるのが無難です。
The climate of Tokyo is milder than London.
とすると、「気候」と「都市(ロンドン)」という異なる性質のものを比較することになります。書き言葉やフォーマルな英文では that of London
と明記することが推奨されます。
Q6. this の複数形が these、that の複数形が those ですか?
A. はい、その通りです。
指す対象が複数の可算名詞である場合は、原則として these(これら)または those(あれら)を用います。
9. まとめ
Demonstrative Pronoun(指示代名詞)を理解するための重要ポイントを整理します。
- 指示代名詞は特定のモノ・人・事柄を指し示す代名詞(this, that, these, those)
- 近称(this / these)は手元・現在・身近なトピックを表す傾向がある
- 遠称(that / those)は離れた場所・過去・客観的距離感を表す傾向がある
- 単独で使えば指示代名詞、直後の名詞を修飾すれば指示限定詞(指示形容詞)
- 会話で既出の文全体を受けるときは that、これから述べる内容は this が好まれる
- 比較表現での名詞の重複を避ける
that of ~/those of ~はフォーマル英文の重要構文 those who ~は「〜する人々」を意味する一般的な文型
指示代名詞は単なる「これ・あれ」の機械的な訳にとどまらず、話し手からの物理的・心理的距離感や文脈での役割を意識することで、日常会話から資格試験、論文読解まで幅広く活用できるようになります。
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